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配信業界の行く末は?これからどうなる?ずっとライバーは続けられるの?

配信業界の行く末は?これからどうなる?ずっとライバーは続けられるの?

2020年に発生した新型コロナウィルス感染症によってリアルイベントだけではなく音楽業界や飲食業界などさまざまなところで大きな影響をもたらしました。

本来なら東京オリンピック・パラリンピック開催による景気の加速が予想されていましたが、コロナ禍の緊急事態宣言による自宅待機やイベントの自粛要請など外出自体ができない状況下で音楽やスポーツイベント数だけでも2020年2月~5月末での損失は約3,615億円に至るといわれています。

音楽業界においても東西の年末メガフェス「COUNTDOWN JAPAN」や「RADIO CRAZY」の中止や延期が発表され各アーティストのワンマン公演においても同じように対応がされました。

新型コロナウィルス感染症の感染対策としてリアルイベントが開催できたとしても3密の対策のため収容人数や場所の確保、確約された売り上げの目途が立たない中でコストだけが掛かるため業界自体の自粛が続いていました。

ライブエンタメ市場の変化

フェスや演劇、ミュージカル、リアルライブなどの施設で行い観客を楽しませるライブエンタメ市場は2010年から2019年の約10年間で市場規模は3,519億円から6,295億円と約2倍に拡大しましたが、コロナ禍の2020年には82.4%減の1,106億円と一気に減少しました。

ライブエンタメは、コロナ前の2010年から2019年で見た際に2倍にも拡大はしているものの、実際のところは2015年の5,119億円から2019年にかけて大きく市場規模は拡大はしていません。これはライブエンタメが限定された場所や人数、需要によっては一般的に身近なものではなかった点が挙げられます。事実、ライブエンタメのチケット価格は上昇傾向にあり開催場所は人口の多い東京や大阪、愛知、福岡の都市圏に集中していることからコロナ禍を除いてもなかなか一般的に浸透はされていませんでした。

しかし、その2年後の2022年には、5,176億円まで大きな回復をはかります。これは、コロナ禍で自宅待機の中、ライブエンタメの持つデメリットを解消したことによる反動ともいえます。さらに2025年には、6,639億円とコロナ禍前の市場規模を大きく超えると予想されています。

この市場規模の大きな変化には、ライブ配信が関係しているとされています。ライブ配信とはスマホ一つでその場でオンラインライブが気軽に楽しむことが可能なサービスを指しており、このライブ配信によってライブエンタメが身近になりさらに需要が高まることへと繋がっていきます。


引用:ライブエンタメ市場の現状と今後の展望

ライブ配信の歴史

意外にもライブ配信の始まりは音楽といわれ1994年11月にインディバンド「The Rolling Stones」が世界初のライブをインターネットサービス「M-Bone」を介して行われました。

国内におけるライブ配信の始まりは2001年の2チャンネル発祥(現FC2)の「ねとらじ」といわれています。しかし、当時はまだ一般的ではなく「インターネットのラジオ放送」に近いものがありました。

その後、YouTubeやニコニコ動画によって2005年頃から音声のみのラジオ配信ではなく映像を流すことのできるライブ配信へと大きな技術的進化を遂げていきます。

2010年代にはさまざまなライブ配信がリリースされ、ふわっちやSHOWROOMによるライブ配信による収益化も実現されたことによってビジネス面でのライブ配信が注目されます。

公式による配信だけに留まらず一般ユーザーの誰でもが利用しやすい技術進歩が見られます。しかし、配信する側の倫理観によっても左右されることの多いライブ配信は当時全体的に広まっておらず、2016年に開始されたAbemaTVなどの動画配信サービスが普及されていきました。

ライブ配信の高まる需要

引用:コロナ禍をきっかけに約9割がライブ配信を視聴するようになったと回答 株主発表会、音楽ライブ、商品発表など、幅広いジャンルで視聴される傾向

緊急事態宣言による自宅待機の中、自宅にいながらも楽しめるライブ配信が台頭していきました。ライブ配信は気軽に楽しめることはもちろん一般ユーザーがライバーとして活躍し始め、各業界がライブ配信に注目するようになります。

初めての緊急事態宣言時には芸能人による自粛の呼びかけをライブ配信で行ったことをきっかけに著名人のライブ配信の需要が高まりライブ配信の使用が増加しました。

ライブ配信や動画制作を中心にデジタルマーケティングを手がける株式会社Candeeが2021年11月に10代~50代の111名を対象とした「ライブ配信視聴」に関わる実態調査をしたところ、コロナ禍をきっかけにライブ配信の視聴をするようになったユーザーは約9割にも及ぶとされています。さらに、今後もライブ配信を視聴し続けるかの質問に対して62.2%が「かなりそう思う」と答えていることからコロナ禍に関わらずライブ配信の需要は高まっていることが考えられます。

そして、元から知名度のあった芸能人やインフルエンサーもコロナ禍の自粛によりSNSやYouTubeでの動画投稿、ライブ配信の使用頻度は増えました。ファンとの交流をはかるものや宣伝としての場から収入を得る場として活用され始めました。

有名人によるライブ配信

引用: BAD HOP 借金1億円無観客ライブ T-Pablowのスピーチが話題に「この会場には愛しかない」

いち早く無観客ライブをライブ配信を通じて行った国内アーティストはヒップホップ・クルーの「BAD HOP」とされており、本来は通常の有観客ライブを予定していましたがコロナの感染拡大とイベント自粛要請により急遽YouTubeで配信する無観客ライブへと変更しました。チケットも当時はすでに完売していましたが全額払い戻しを実施し1億円もの負債を負いますが、後にクラウドファンディングにより支援を募りました。事実、公演のキャンセルだけであれば3~4,000万円で抑えられたにも関わらずコロナによる暗い雰囲気を払拭したく世界にポジティブなメッセージを発信したかったとBAD HOPのT-Pablowは語っています。

その後、サザンオールスターズやAKB48などの国民的アーティストがNTTドコモの動画配信サイト「新感覚ライブCONNECT」で無観客ライブを行いオンラインライブの知名度は上がり一般的なものになりました。サザンオールスターズのライブに関しては18万人がチケットを購入し推定50万人が視聴したとされ影響力は計り知れないものとなりました。

さらに、ARやVR、投げ銭などの機能もオンラインライブに組み込まれていき通常のリアルライブとはまた違う体験ができるものとなっていきました。

このように、アーティストによる無観客ライブを有料で行うことにより自宅でライブを楽しむことができる仕組み出来上がります。コロナ禍の前からこの仕組みはありましたが、皮肉にも一般的ではなく、あくまでも「おまけ」や「ファンとの交流をはかるもの」としてしか扱われていませんでした。

2020年4月にはゲーム空間でのライブでも話題を呼びオンラインゲーム「フォートナイト」でのラッパー「トラヴィス・スコット」によるパフォーマンスは1,200万人が参加し大いに盛り上がりを見せました。

波及されていくライブ配信

2020年5月から本格的な電子チケット制の有料オンラインライブの市場規模は立ち上がり年間合計は448億円と短期間の間で急成長を見せます。

リアルイベントに比べて人数制限がない、開催場所から離れていても移動費や宿泊費などの費用が掛からない点で気軽に参加できるなどのメリットに注目されコロナ禍前に戻りつつある現在でもライブ配信は需要が高まる一方です。

コロナ禍によってライブ配信の需要が高まり、音楽に縛られない演劇やお笑いなどのオンラインライブが開催され、さまざまな層のニーズに合わせたライブ配信アプリもリリースされます。

これによりエンタメ系のアプリ全体で2020年2月から3月にかけてダウンロード数が約20%増加し同年3月の前年同期比は約28%増の5,640万ダウンロードに上るといわれています。さらに、ライブ配信などのデジタルライブエンタメ市場だけを見た際に2020年は140億円、2021年には約2倍の314億円と急成長が見られます。

オンラインライブの欠点

ライブ配信のメリットであるその場で気軽に楽しめる点はリアルライブにおいてさまざまなデメリットの解消へと繋がりました。

しかし、一方でリアルライブ特有の一体感やリアリティ、臨場感を演出するための何台にもわたるカメラの設置、ネット回線に左右される点がデメリットとして挙げられます。リアルライブの代替としてライブ配信が注目はされたもののリアルライブならではの特性まで同じようにオンラインライブで模倣することまではできませんでした。

ライブエンタメとライブ配信の融合

上記で記述したようにライブ配信でリアルライブを気軽に楽しめることによりライブエンタメの制限された場所や人数のデメリットは解消されましたが、一方で「リアルライブならではの臨場感がなかった」「ネットの回線に左右される」などの声もあります。一方でライブ配信を視聴したことでリアルライブへの期待が高まり今まで参加したことのなかった層が興味を示し始めました。

このことから、リアルイベントを通常の有観客ライブとして行いながらもオンラインライブとしての配信と時間の都合で参加できないユーザー向けにアーカイブ配信することで、臨場感を味わいたい層と自宅にいながらも楽しめる層の取り込みが可能になりました。

これまでリアルイベントへの参加が難しかった層にとっても気兼ねなく楽しむことができるようになりコロナ禍前の関心がなかった層がオンラインライブを通じて見込み客となりつつあります。

まとめ

2020年はコロナ禍によるライブ配信の転換期といえます。推定ではありますが2025年のライブエンタメ市場は過去最高値の6,639億円に至るといわれているほど注目されています。さらに、音楽業界だけではなくECとライブ配信を組み合わせたライブコマースも注目されています。

このことから、ライブ配信を利用してリアルタイムでの交流はさまざまな視点から注目されていることが分かります。

最後に、ライブ配信が日常の一部に溶け込みつつリアルライブとの融合によってお互いの欠点を補いあう関係のなか、新たな可能性を見出しインターネットの技術進歩とともにライブ配信のさらなる進化が期待できることでしょう。

LIVERAD